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「このコマは来年開講しない」といわれたけれども、大学側のカリキュラム編成権の問題だというばかりで納得いく説明をしてくれない

 これまで4年にわたって担当してきたコマなのに、大学側の事情変更で来年度の不開講がいきなり通告された。あなたならどうしますか?
 問題は3点あります。
 第一に、大学側のカリキュラム編成の変更と、非常勤講師の身分変動とが自動的に連携するのか、という論点です。おそらくそういう解釈は成り立ちえません。論理的に別の問題です。
 第二に、仮にカリキュラムの編成権が大学側にあるとして、カリキュラムの変動にともなって、非常勤講師の身分変動を発生させなければならない事情が生じたとしても、たとえば解雇または雇い止めを未然に防止することに努力する義務が、同様に大学側に存在すると考えられます。その場合、そのコマを削減の対象とすることについての合理的な説明が必要であり、次にその人に別の講義を担当してもらうなどの斡旋をしたり、さらには事前にその可能性を通告するなどの手続上の責任があると思われます。
 第三に、もしも事前に本人に来年度の時間割などについての意向を聞かれていたというような事情がある場合、事態はより労働者側に有利になります。この場合、来年度の時間割についての問い合わせとは、イコール使用者側による更新申し入れと解せられる余地があり、これに対して労働者側が受諾する意向を示した場合、そこで双方の意思が確認されたわけですから、次年度の契約更新についての黙示の合意が形成されたと解する余地が発生します。この場合、これを採用内定、すなわち「始期付解約権留保付労働契約」(最二小判1979.7.20.最高裁民事判例集33巻5号582ページ)と解する余地が発生します。すなわち、使用者側が次年度の意向を聞き、かつ非常勤講師が「わかりました」といってこの用紙を受け取ったあとで、大学側が次年度の減コマ(=雇い止め)を通告したとしても、それは上記労働契約の解約を意味するわけです。
 すなわち、少なくとも次年度の分は確保されることになります。
 ただし、上記の次年度の意向に関する文書をもらった非常勤講師は、速やかに大学側に提出することをおすすめします。大学側が、「そちらの意向が確認されていない」と反駁する可能性が発生するからです。
 次年度分が確保されたとしても、問題はその次の年度です。次年度確保の段階で使用者側は、「来年度だけですよ」というかもしれません。しかしそれについては、合意を留保しておく必要があります。いずれにしても、その次の年度のことは、また来年度になって交渉することになります。