大学非常勤講師の厚生年金加入を求める請願
衆議院議長 河野洋平 殿
参議院議長 江田五月 殿
請願趣旨
厚生年金保険は強制加入制度であって、本来被用者の権利です。しかし、会社役員などが加入できる一方、「細切れ・掛け持ちパート」労働者とはいえ、大学と雇用関係を結んで大学教育を支えている大学非常勤講師は、厚生年金の加入資格があるのに、排除され、不当な扱いを受けています。
私たちの試算では、厚生年金に加入できた場合と比較してみると、給付金の格差は、国民年金と厚生年金とで、たとえば10コマ担当している人なら、約2178万円 (註)となり、厚生年金保険から排除されていることによって、将来にわたり大きな損失が生じます。
今回の厚生年金加入条件の改正では、労働時間数だけが30時間から20時間に短縮されようとしていますが、これでは大学ごとに1コマ、2コマと掛け持ちしている大学非常勤講師をはじめ、多くの「細切れ・掛け持ちパート」が加入できません。
「細切れ・掛け持ちパート」労働者の厚生年金加入の根本的解決には、小額の賃金に対しても事業所に保険料負担を求め、一人ひとりの被用者について複数事業所の保険料を合算する制度を作ることが必要です。
同時に、私たちはさしあたり、2004年度に厚生労働省が示した「65万円以上」の条件を再度改正案に盛り込むよう求めます。
また、社会保険庁監修『誰にも分かる社会保険の手引き』は、合算規定対象者として「会社役員」と「特殊技能者」をあげています。私たち大学非常勤講師もまた、典型的な「複数事業所に雇われている特殊技能者」であり、したがって、現行諸法の下においても、直ちに大学非常勤講師を合算規定対象者として認めるよう強く求めます。
(註)1975年生まれの大学非常勤講師をモデルとしている。1コマ3万円で10コマ担当しているとみなす。64歳まで働き、86歳まで年金給付を受けると仮定すると、国民年金だけの場合に支払った保険料と給付金の差額は+974万円、20歳から27歳までは国民年金、28歳から64歳まで厚生年金に加入した場合の同様の差額は+2475万円で、厚生年金に入った場合のほうが、1501万円有利になる。これに健康保険・介護保険の格差を加味すると、2178万円も厚生年金・政府管掌健康保険のほうが有利になる。
請願項目
1.「コマ切れ・掛け持ちパート」労働者が、厚生年金保険・健康保険に加入できるよう、複数事業所の収入を合算する制度を求める。
2.厚生年金加入資格に、年収「65万円以上」程度の条件を付け加えるよう求める。
3.大学非常勤講師を、社会保険庁監修『誰にでも分かる社会保険の手引き』が合算例としてあげている「複数事業所に雇われている特殊技能者」と認め、現行諸法のなかでの合算規定の対象者とすることを求める。
<取り扱い団体>
首都圏大学非常勤講師組合 〒170-0005 豊島区南大塚2-33-10 東京労働会館5階 東京公務公共一般労働組合内 関西圏大学非常勤講師組合 〒542-0012 大阪市中央区谷町7丁目1-139-102 大阪私大教連気付 東海圏大学非常勤講師組合 〒467-8501 名古屋市瑞穂区瑞穂町字山の畑1 名古屋市立大学人文社会学部 菊地夏野研究室気付 大学等非常勤講師ユニオン沖縄 〒902-0072 沖縄県那覇市真地277-12-407 平井真人宅気付 全国一般労働組合東京南部大学教員支部(UTU) 〒105-0004 港区新橋5-17-7 全国一般労働組合気付
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