非常勤の声

『非常勤の声』第2号

2004年6月29日発行

関西圏大学非常勤講師組合
〒542-0012 大阪市中央区谷町7丁目 1-39-102 大私教気付
委員長:新屋敷 健
郵便振替 00950-2-203528
URL: http://www.hijokin.org
E-mail: infoアットhijokin.org

主な内容
◇2004年度大学団体交渉要求書(案)
◇A大学・短大コマ減問題・団交の成果
◇A大学・短大コマ減 英語教師Yさん手記
◇法人化後の国立大学における非常勤講師問題 新屋敷 健
◇外国人非常勤講師J Gさんの訴え
◇組合:活動手帳
◇新聞が伝える非常勤講師今日的情況

04年度私立大学団体交渉要求書を作成

非常勤講師のみなさん
日頃より当組合にご支援くださり,ありがとうございます.
 当組合は,非常勤講師をめぐる様々の待遇改善のために,夏休み中に関西圏の諸大学(関西,近畿,大阪電通,立命館,同志社,龍谷,京都産業)と団体交渉をもつ予定です.私たち非常勤講師は大学の教学になくてはならない存在であるにもかかわらず,その置かれている諸条件は,あまりにも劣悪であると言わなければなりません.
 私たちは,本号p.2-3に掲載しましたような基本要求骨子(案)をもっていますが,みなさんの声を反映させて,その内容を充実したものにしたいと考えております. つきましては,ファックス・e-mailにて,みなさんのご意見をお寄せくださいますよう,御願いいたします.具体的な数字・内容でのご提案を歓迎いたします.
 Eメール:nityshr@osk.3web.ne.jp までお知らせください.
  書記長:内藤義博
3月19日付「来年度,担当クラスが不開講になりました」通知で2コマがなくなった!
断固認められない!団交の末,2コマ1年分全額支給.
「毎日新聞」(6/1夕刊)「ある私立大学であった事例」「契約不履行と主張」の詳しい内容 →pp.4-5

Dear fellow hijokin koushi, I think the hijokin koshi as a group should find some kind of health insurance outside the national system. Ideally, the universities should help us to pay. JG →p.5

カンパのお願い

執行委員長 新屋敷 健
 今年3月に関西の二つの非常勤講師組合が合併して関西圏大学非常勤講師組合を結成しました.二つの組合は結成以来,一貫して大学で働く非常勤講師の劣悪な労働条件を改善し,誇りを持って働けるよう,さまざまの活動を行ってまいりましたが,合併後も,そうした活動を継承・発展させたいと考えています.

 私たち非常勤講師は高等教育を底辺で支えてきたし,また現在も支えているし,これからも支えていくものと考えています.私たちの活動をもっと広く,活発に行えるようにするために,皆さんからのご支援のカンパを募っております.こうした私たちの活動にご理解くださり,多数の方がご支援をくださいますように,御願い申し上げる次第です.

 郵便振替:00950-2-203528(加入者名:関西圏大学非常勤講師組合)

=関西圏大学非常勤講師組合= 2004年度労働条件改善要求趣旨 (案)

 文部科学省の「学校基本調査」によれば,平成15年度の大学進学率は41.3%,短大進学率は7.7%となり,両方で49%に達しました.また,大学を卒業するまでにかかる経費は上昇しつづけ,大学4年間に必要な入学金と授業料だけをとってみても,関西圏の主要大学の文系で400万円前後,理系で550万円前後と,世界に例を見ないほどの高額に達しています.一方で,日本社会は経済構造の急激な変化に振り回され,約5%というかつてない高失業率に喘いでいます.

 そもそも大学が,営利団体や一般企業とは異なり,教育・研究という社会的責任をもつことは言うまでもないことですが,民間労働者の平均年収(平成13年度:40〜54歳のサラリーマンの平均年収530万円,全世帯の平均年収は589万円,国税庁および総務省調べ)に達するほどの高額な学費が必要であるにもかかわらず,大学進学率が上昇しているという現象は,国民が将来を担う若者たちの教育にいかに大きな期待を寄せているのかということを示しており,これに応じるべく大学は,一人ひとりの学生を大切にしたきめ細やかな教育の質的向上になお一層努力する必要があります.

 大学における教育力の強化が求められる状況の中で,大学教育における非常勤講師の比重も漸増を続けており,2002年度には総コマ数に占める非常勤講師の担当するコマ数が関西の六大学(関西,近畿,同志社,立命館,龍谷,京産)の平均で35%に達しています.その理由は,専門分野の細分化,安上がり経営など考えられますが,いずれにしても大学教育における非常勤講師の役割が,「非常勤講師なくして大学教育は成り立たない」と言っていいほどに,重要なものになっていることを示しています.

 翻って,非常勤講師の待遇を見てみると,およそ上記の重要な役割に見合った待遇が与えられているとは言いがたいことは一目瞭然です.賃金は1コマあたり,月額25,000円前後で,専任並に月5〜6コマ働いても年収150万〜180万円にしかなりません.専任教員の年収は900万〜1200万円ですから,格差は控えめに見ても6〜7倍になります.さらに研究費,退職金,社会保険を考慮すれば格差はさらに拡大します.これは1997年に批准されたユネスコ「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」で「公平でいかなる差別もない雇用の条件を確立しなければならない」(40条)とし,非常勤の場合は「常勤で雇用される教育職員に比例して同等な報酬を受け,かつ相当する基本的雇用条件を享受しなけれぱならない」(72条a)と述べられているような同一労働同一賃金の原則に対する甚だしい逸脱であります.

 そればかりではありません.厚生労働省はかねてよりパートタイム労働処遇や労働条件に関し,通常の労働者との均等を考慮するための「均衡待遇ガイドライン」を出し,同一労働に対してはパートであろうと,正社員の最低でも8割程度の賃金を支払うのが社会通念上当然であると明記しており,実際にそれを求める判例も出ています.大学非常勤講師の現状は,専任教員の授業以外の職務を考慮してもなお,常軌を逸した格差と言わざるをえません.4月28日付「朝日新聞」の社説が「非常勤講師 こんな処遇ではいけない」と,大学経営者に対して厳しい注文を出したのも当然のことと言うべきでしょう.

 大学教育の中で大きな役割を担っている非常勤講師に対するこのように劣悪な待遇は,非常勤講師の個人的な努力にもかかわらず,今日の大学教育に強く求められている教育力の向上を阻害する大きな要因となっています.カリキュラムやテキスト選定に関する協議にも加われず,一方的に決まったカリキュラムやテキストを押し付けられる,教授法の研究を始めとして,教育力を向上させるために必要な研究のための時間と費用も認められていない,授業時間以外の学生指導のための時間と費用も給与には算定されていない等々.大学非常勤講師はティーチング・マシンではありません.大学教員の半数がこのような状態に置かれていて,現在求められている教育力向上の可能性が,いったいどこにあると言えるでしょうか?

 大学非常勤講師の待遇改善については,文部科学省もその必要性を認め,今年度の私学助成予算に,大学非常勤講師の給与への補助単価を3,400円から5,100円に1.5倍化する措置をとりました.

 教育はまさに「待ったなし」であり,日常不断の行為です.それを支えている非常勤講師の待遇につき,早急に貴理事会で検討され,改善されるよう,要望するものです.

2004年度労働条件改善要求項目(案)

1) この話し合いを正式な団体交渉と位置付けること(以下の項目について責任を持って回答できる担当者,理事および教学担当理事が出席すること).

2) 話し合いの後,文書により回答すること.

3) 貴大学の現状について,以下の点を明らかにする資料を事前に当組合へ送付すること.
1.教員数(雇用形態別※にそれぞれ).
2.自己都合による者も含めて,昨年度で雇い止めになった非常勤講師の人数と今年度新規採用された非常勤講師の人数.
3.授業のコマ数(雇用形態別に※)
4.教員に支払われている給与の総額(雇用形態別に※).
5.常勤教員給与に占める授業担当・研究・教学運営(教授会,入試,カリキュラムなどに関わる労働)のそれぞれの割合.
6.教育と研究の関係についての貴大学の見解.
7.教員給与に対する助成金の総額(雇用形態別に※).

※「雇用形態別」とは,常勤教員・本務校のある非常勤講師・本務校のない非常勤講師のことです.

<雇用の安定化>

4) 次年度の契約は遅くとも10月末までに本人に確認すること.

5) 一方的な雇い止め,正当な理由のないコマ数減を行わないこと.カリキュラムを大幅に変更するときには,担当の非常勤講師の意見を聞くこと.またこのことを全ての専任教員に周知徹底すること.

6) 非常勤講師のコマ数を削減する場合は,専業非常勤講師を優先的に残すこと.やむを得ず雇い止めをする場合は,その理由を当事者に伝えること.

7) 契約後履修者が少ないなどの理由で開講しない場合は,契約期間内の賃金は全額を支払うこと.

8) 出産,育児,介護を理由に雇い止めを行わないこと.

9) 非常勤講師にかかわる規定の変更などについては,当事者である当非常勤講師労働組合に意見を求め,報告を行うこと.

<労働条件の改善>

10) 厚生労働省が出している「均衡待遇ガイドライン」を遵守すること.

11) 私立大学等経常費補助金のうち非常勤講師給与費の大幅増額(「標準経費」が時間あたり3,400円から5,100円に1.5倍化)を給与に反映させること.

12) 1コマ当たりの給与を2倍化すること.

13) 夏期冬期の一時金をそれぞれ二か月分支給すること.

14) 退職金を支給すること.

15) 非常勤講師を私学共済および失業保険に加入させること.

16) 専任教員と同様に日本育英会の奨学金返済を免除するよう文部科学省,育英会に働きかけること.大学非常勤講師に対する国の助成金の増額を文部科学省に働きかけること.

17) 労基法に基づいた雇用契約書および就業規則を作成すること.

18) 授業準備の経費を含む研究費を,1コマにつき最低年額3万円支給すること.

19) 1クラスの人数を適正な規模に制限すること(一般講義100名以内,ゼミ,外国語30名以内).また,受講者数が基準より多い場合には,超過する人数に見合った特別手当を支給すること.

20) 有給の産休・育児休暇の規定を作ること.

21) 健康診断を非常勤講師も受けることができるようにすること.

22) 身分証明書を非常勤講師にも発行すること.

23) 組合の掲示板を講師控室に設置すること.

首都圏非常勤講師組合では, 専任教員の研究保障とアルバイト制限によるワークシェアリングの実現も要求しています.

○専任教員の研究を保障するために,担当コマ数の制限を維持すること.

○同時に,専任教員による本務校以外でのアルバイト的な非常勤を制限すること.

新学期直前 2コマ削減を通告.団交で1年分全額支払いを獲得!

― ひどいはなし ―

 Yさんは95年度からA大学・短大で非常勤講師として勤務していました.04年度は短大で英語2クラス,大学で英語1クラスを担当することになっていました.すでに文書で契約書も取り交わしています.ところが,新学期を目前に短大の2クラス「不開講」を通告されたのです.

 この時期に「不開講」とはひどい.責任者にその理由を質問したところ,「新入生150名5クラスの予定が120名であったので,クラス減はどうしようもない」との返事でした.一クラスの定員を減らすことでコマ数を確保してほしいとYさんは懇願しましたが「その意志は全くありません」という.そこで,Yさんが,他のクラスを担当している非常勤の先生複数に電話で問い合わせてみたところ,コマ数の増えている先生もいるし,新任の非常勤がいることも判明しました.開講責任者の高圧的な会話に不安を抱いたYさんは組合執行部に相談し,団交に臨みました.

― 筋がとおらない ―

 団交の席で,組合は「大学側はこれを不開講科目とすることで,2か月分だけの手当てを支給して終らせようとしているがこれはおかしい.不開講とは学生登録が終了した時点で学生が集まらなかった科目についていわれることである.削減された科目は必須科目であって,大学の意志によって1クラス当たりの学生数とクラス数を決定するものである.したがってこれは不開講ではなく,解約にあたる.契約書に『3ヶ月前に通知しなければ解約の効力は生じない』とあるので,大学はYさんを元の状態に復帰させなければならない.それができないというのであれば,違約金として12か月分の給与全額を支払うべきである」と主張しました.

 さらに,「予定していた人数の新入生が集まらなかったのは大学の責任であり,非常勤のコマ削減はその責を非常勤に帰するものであり,断じて認めるわけにはいかない.非常勤がいないとカリキュラムを編成できないにもかかわらず,困難に直面すると,いとも簡単にその責任を非常勤に押し付けるのはいかがなものか.大学側は学生数の減少に対し,どのような策を講じてこられたのか,お聞かせ願いたい」と質問しましたが,回答はありませんでした.

 また,なぜ,はずされたのがYさんであるのかという質問に対する回答も納得のいくものではありませんでした.

― 同情的解決? 大学の責任は?―

 後日,大学から,これは不開講であって契約違反ではないが,「生計に少なからぬ支障が生じることになるとの御指摘」がありましたので,「本件についてはY講師に12か月分の給与(相当額)をお支払する」旨の提案がなされました.Yさんと組合は,本年度の科目担当を回復できなかったという無念さを残しつつも,この提案を受け入れました.

 団交を通じてわかったのは,大学は雇用にかかわる責任などこれっぽっちも考えてはいないということです.それと同時に,大学の理不尽に憤り,戦うことを決心したものだけが,自己の矜持を持ち続けられるということです.(N)

[問題発生と交渉の経過]

03年12月10日付:大学教務課「2004年度担当科目」を通知.英語B(前期2),英語C(後期2),英語D(通年).
04年3月1日付:教務課より「担当科目(決定通知)」あり.
3月15日までに:Yさん「非常勤講師雇用契約書」を提出.
3月18日付:教務部長,科目担当教授より,英語BとCのクラスの不開講を通知される.
3月25-26日:Yさん,組合執行部と相談の上,大学に2コマ減について問い合わせ,不承知の旨を電話で伝える.
3月30日:大学から専任2名が出席して事情説明を行なう.
4月2日付:組合,大学に次の3点で団体交渉を申し入れ.(1)削減された担当クラスの開講.できなければ代替コマの割り当て.(2)上記(1)ができない場合,大学の都合により解約された契約の全額を支給すること.(3)今後,Yさんに対して不当な扱いを行なわないよう,教員・職員に周知徹底すること.
4月7日付:学長名で返事あり.2カ月分の給与を支払うが,それ以上の対応はできない.話し合いには応じる.
4月10日:組合,大学と団体交渉をもつ.
5月6日付:12か月分給与相当額を支払うとの回答あり.
5月15日:Yさん,大学,組合の三者で「合意書」を作成.合意事項1)2)不開講とされた担当科目の一年間の給与相当額を支払う.3)本件合意は今回に限定した措置,前例としない(同様のケースは,個別に対処するとの意味であることをその場で確認).4)大学はYさんに対し,本件による不利益を与えないことを確約する.5)本合意事項の成立をもって一切が解決.今後,異議申し立てをしない.

今回の件を通して私が望むのは,大学人は常識を持った社会人であって欲しいという事である.

英語教師Y
その一,非常勤であっても雇用しているのであり人の生活に責任があるという認識を持って頂きたい.
その二,専任と非常勤の給与格差からくる経済的利点からのみ見ても非常勤なしに大学経営は成立しないのであり,互いに依存する関係にあるという認識を持って頂きたい.
その三,非常勤の殺生与奪の権利は我に有りという態度は謹んで頂きたい.

 今年3月19日,某短大から速達で「来年度,学生数の激減のため担当クラスが不開講となりました」と通知を受け取った.私はこの大学で9年間,非常勤で英語を教えてきた.経済的な痛手と同時に,新学期を目前にしたこの時期に一枚の紙切れでコマ削減を通告するというやり方にショックを受けた.

 この短大の同種類のクラスでは,新たに雇用された非常勤もコマ数の増えた非常勤も存在する.なぜ私が解雇対象になったのか,なぜ5クラス(1クラス24名)ではなく4クラス(1クラス30名)に固執するのかという質問を,その後の大学側との話し合いでも団体交渉においても繰り返したが,明確な回答は与えられなかった.

 1回目の話し合いでは「当大学の存続のため」という表現は,後の団交では「このクラスの学生数は常に30名以上であったから」という表現に変わった.どちらも大学経営上の経済的理由で,教育学上の理由ではない.この大学は四季それぞれに美しい花々が咲きよく手入れされたキャンパスに瀟洒な建物が魅力の,専任教員からも大学が存続を心配しなければならない状態にあるとは想像もできない優雅な雰囲気を持っている.

 私は専業非常勤講師で昨年度,8コマ受け持ち年収250万円弱であった.この中から国民年金,国民健康保険を支払い,更に学会費用や研究費を賄っている.不開講と通知された2コマ,年間60万円は多大な意味を持つ.しかし,大学側の説明では私のコマ減を決定した会議では様々な事を話し合ったため詳細は記憶しないし,議事録もないとのことであった.新学期2週間前という切羽詰った時期,そのうえ被雇用者の同意のない一方的な雇用条件の切り下げは雇用契約違反であるが,その決定に至った経過も記憶していないというのは常識の範疇であろうか.

 事業会社では需要予測は重要課題である.18歳人口の推移を総務省の「人口推計年報」で見ると,03年は5万人減少していた.04年は6万5千人が減少することが予想されており,今後も年間2万5千から5万2千人の減少が予想される.大学の新入学生数の予測は,事業会社の売上予想に比較するとはるかに容易いように思われる.今回の件のように新入学生数を前年度の新入生と同じ数に予想し,学生数の不足分に合わせて非常勤を切っていく.それも,新学期2週間前に切ることで収支を調整することを慣例とする.これほど安易な経営はあるまい.

 4月28日付の朝日新聞社説「非常勤講師 こんな処遇ではいけない」によると,日本の大学の講義の3〜4割を非常勤講師が担当しているとある.非常勤も高度な教育を受けた者たちである.殆どの非常勤が大学院に進学しており博士課程修了者も多い.

 かつては授業料を支払った大学の客であり,今は専任教員の何分の1かに過ぎない給与で働くパート労働者である.我が国大学の学部在学生数は97年度の291万人をピークに減少し続けている.一方,大学院の学生数は現在も増加し続けており,学生数の減少を小幅に留める貢献をしている.大学院の卒業生すべてが非常勤講師になるわけでない事は充分に承知している.しかし,敢えて言うならば,大学にとって安い賃金で働くいつでも削減できる便利な将来の労働者に成り得る学生という都合のよい客を増やすことで当面の学生数の減少を回避しているというのは言い過ぎであろうか.


学長さん,ご理解していただきたいのはこっちの方や!
何とぞ,事情を御賢察の上,引き続き本学学生の教育支援にお力添え賜りますよう,御理解・御了承くださるようお願いいたします.(非常勤講師手当て10%カットした学長からの「お知らせ」)
関西でも授業コマカット・給与カット続出!
どないして国民年金・国民健保払えっていうの!?

法人化後の国立大学における非常勤講師問題

新屋敷 健
 国立大学の法人化移行に伴い非常勤講師の賃下げ・コマ数減が全国的に横行し,25%減額した大学もあります.そこで,先月緊急に,関西圏・首都圏(委員長:志田 昇)・UTU(委員長:John Casey)の3大学非常勤講師組合が合同で,下記のような非常勤講師の給与の一方的引き下げの撤回・改善を求める要請書を,各国立大学の学長宛に送付しました.

 7月,この要請書を踏まえて,3組合は,文部科学省・厚生労働省との合同陳情交渉を持つ予定です.また関西圏大学非常勤講師組合も,現場の非常勤講師と協力して,京大・大阪外大との団交を検討中です.毎年運営費交付金が1%づつ減額されるというコスト削減の痛みを,非常勤講師に一方的かつ理不尽に押しつけることは,パート労働法の均等待遇の理念に対する違反にほかなりません.


2004年5月25日
国立大学法人 大学長 殿
[ 要 請 書 ] (要 旨)

 去る平成16年2月23日,首都圏大学非常勤講師組合ほか4つの組合と文部科学省との合同陳情交渉が行われたことは,3月15日付・15文科人第326号『法人化後における 非常勤講師の給与について(通知)』で周知のことと思います.

大臣官房人事課審査班の担当者は,*河村副大臣(当時)の方針に変更はなく,また非常勤講師給賃下げは文科省の意向ではないし,そもそも来年度の運営費交付金は,前年度の専任教員給と非常勤講師給を「上回る」人件費を積算として提示している,との回答でした.

 以上の交渉の経過と,その成果である通知の送付にもかかわらず,現在一部の国立大学法人において,一方的な非常勤講師給の引き下げが行われています.よって,今後の非常勤講師に対する処遇として,以下の点につき大学当局からのご回答をいただきたく,要請いたします.なお6月中にご回答をいただけない場合は,その旨を公表し,文部科学省へ通知して再度交渉の俎上に載せる予定でおります.

(1) 非常勤講師の給与について

○法人化後に行われた,非常勤講師給の一方的な引き下げの撤回,及び改善を図ること.

第1に,運営費交付金における非常勤講師給の減額査定という情報は,文部科学省の担当課によって明確に否定されており,根拠がない.第2に,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律には正社員とパートの均衡処遇がうたわれており,すでに昨秋の対文部科学省交渉の中で,私学助成課課長は格差の存在を認め,対策として助成金の補助単価を引き上げ,「均等待遇の具体化として,国立の処遇を参考に算定した」と回答している.第3に,当組合の要請後,15文科人第326号『法人化後における 非常勤講師の給与について(通知)』が各大学に送付されている.

これらの理由から,法人化後に非常勤講師給の引き下げを行う正当性は存在しておらず,極めて違法性の強い不当な事態であると認識せざるを得ない.

(2) 労災保険・産休について

○非常勤講師にも労災保険が適用され,産前・産後の休業が保障されていることを周知徹底させること.

以上

(*注) 河村副大臣(当時)の発言

「...非常勤講師についてはいわゆるパート労働法といいますか,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律,この適用になっていくわけでございますから,...通常の労働者との均衡等を考慮して適正な労働条件を確保する」(第156回参議院・文教科学委員会/2003.6.5).「...これは,国立大学法人に今度なりますと,運営交付金が算定して渡されるわけでございます.この枠の中でやるわけでございますが,法人化になった途端にどんと下がるというようなことはあり得ないことであります.そんなことがあってはならぬわけでございまして...」(第156回参議院・内閣委員会/2003.6.12)


◇1カ月6万円の国保保険料!老後資金の貯金も没収される.◇外国人非常勤講師も安心して仕事のできる社会保険システムを!
Dear fellow hijokin koushi,

There are bad news for people who have decided to stop paying the national health insurance. Last month the kuyakusho seized 300,000 yen from my savings account to pay for part of what I owe them. Because I did not have enough money in my bank account, they told me that they would seized the rest in June, and if there was not enough in the bank, they would seize my salary.

My case is a little extreme, but I do not think it is unique. It is true that many hijoukin have a full time employment somewhere, and many have a spouse or relative with whom they share the cost of health insurance. But many of us are neither fully employed nor living with someone, and for us the cost of insurance is extremely high. For example, because I was teaching 13 classes last year, the cost of my health insurance for this year will be nearly 60,000 yen per month, even though I only teach 11 classes now.

As a foreigner in my late 40's, I am not eligible for the national pension system because I will not have subscribed long enough by the time I would retire. Beause of that, last year, I decided to stop paying the health insurance and to save that money for my retirement. Now that the kuyakusho has seized my savings and want to force me to pay from now on as well, I have neither retirement money, nor do I have any savings now to pay for my share of health fees if I were to be sick.

I think the hijokin koshi as a group should find some kind of health insurance outside the national system. Ideally, the universities should help us to pay. If not, they should make arrangements with a private company so that we could get a group rate.

JG (Doshisha university, Kyoto joshidai, Saga Bidai)


○組合は,厚生労働省に,複数校に勤務する非常勤講師の勤務時間を合算して,社会保険に加入できるよう制度改正を要求しています.また,私立大学にも大学間で協力して保険料を負担するしくみをつくるか,国保保険料の補助費を出すよう要求しています.
(日本語訳)

非常勤講師のみなさん

 国保保険料を払わないことにした人に悪いニュースがあります.先月,区役所は,国保料未払い分の一部として30万円を私の銀行口座から差し押さえました.残高不足のため,残りは6月に差し押さえる,それでも足りなければ,給料から差し押さえるそうです.

 私の例は,極端な例かとは思いますが,例外ではないと思います.非常勤講師のうち多くは,他にフルタイムの仕事を持っていたり,保険料を分担してくれる配偶者や身内がいます.でも,フルタイムの仕事もなく,同居人もいない場合も多くあります.その場合,保険料は異常に高いものになります.例えば私の場合,去年13コマ担当していたので,今年は11コマなのに,保険料は1ヶ月6万円近くになります.

 私は40代後半の外国人で,国民年金を受給することができません.年数が足りないからです.だから去年,健康保険を払うのをやめて,老後の資金を貯めることにしました.今,区役所は,私の貯金を差し押さえ,今後国保料を支払わせようとしていますが,私には老後のお金も,もし病気になったときの自己負担分を払うお金もなくなってしまいます.

 非常勤講師のために,国保以外の健康保険が必要なのではないでしょうか.本当は大学が一部を支払うべきですが,そうでなくても,団体割引のようなものを適応することはできないのでしょうか.

J G (同志社大・京都女子大・嵯峨美大 非常勤講師)

☆組合のホームページ http://www.hijokin.org
☆組合電子メール info@hijokin.org

○活動手帳○

5月8日:第2回執行委員会(大私教)
5月15日:A女子学院短期大学合意書調印
5月28日:京滋私大教連執行委員会(京滋私大教)
6月5日:第3回執行委員会(大私教)
6月19日:「労働法解体」学習会(大私教)

新聞が伝える非常勤講師今日的情況

朝日新聞 社説 (4/28付)
「非常勤講師 こんな処遇ではいけない」

 首都圏や関西の非常勤講師組合の調査によると,1コマ,90分の講義を受け持って,平均賃金は年30回で計約30万円.年齢は平均で42歳だ.講義の準備や試験の採点にかかる時間を考えれば,学生の家庭教師並みの時給である.  専任教員並みに5コマの講義を担当しても,年収は150万円ほどにしかならない.講義のための本代や学会に出席する費用は自己負担だ.契約は1年ごとで,専任教員になれる保証もない.

 文部科学省の調査によると,専業の非常勤講師は全国で延べ約6万7千人にのぼる.いくつかの大学を掛け持ちしている人が多いので実数は2万数千人と見られるが,こうしたパートタイム教員が科目の3〜4割を担当しているのが日本の大学の現実である.

 非常勤講師がこんなに増えたのは,大学が人件費を抑えようとしたからだ.学生が増え,大学で教える科目が多くなったにもかかわらず,専任教員をそれほど増やさなかった.

 大学院を修了した人たちが増え,教員予備軍があふれていることにあぐらを かいてきたともいえる.

 文科省もさすがに放っておけなくなったのだろう.私立大学への助成で,非常勤講師の賃金の補助単価を今年度から5割引き上げた.この際,私立大学は補助金に自主財源をもっと上乗せして,待遇を改善すべきだ.

 文科省は国立大学に対しても「4月の法人化後,非常勤講師はパートタイム労働法の適用を受けることになる」と通知した.法人化で教職員は公務員でなくなり,一般の労働法の適用を受ける.国立大学も専任教員の待遇とのバランスを考えなければならないというわけだ.各大学はこの通知を重んじてほしい.

 いまや多彩なカリキュラムを組むには非常勤講師は欠かせない存在となっている.だからこそ,研究と教育への意欲を持てるように処遇することが,学生たちのためにも必要である.大学が自らこの問題に取り組まなければ,大学の自治や学問の自由の理念が泣くだろう.非常勤講師の問題をいつまでも大学の恥部にしていてはいけない.


夕刊フジ(6/5付)

☆だれにも教えたくない
☆週末サイドジョブ非常勤講師

 国の助成で私学非常勤講師への給与補助が50%ほど引き上げられることになったので,賃金体系も良くなるでしょうから,非常勤講師の仕事も注目されていいと思いいます.今後は株でいう゛カイ゛の仕事のひとつではないか,というのだ.処遇の変わりつつある非常勤講師はねらい目のある仕事とみていいだろう.☆


『毎日新聞』大阪夕刊 (6/1付)

 関西の大学非常勤講師組合 合併で新組織設立▼少子化の影響で厳しさを増す大学経営のしわ寄せで,低賃金や突然の契約解除など理不尽な待遇に泣かされている非常勤講師は多い.▼今春,ある私立大であった事例では,雇用契約を交わした後の3月末,大学側から「学生が集まらなかった」として,授業時間削減と給与減を告げられた.団体交渉で「契約不履行」と主張し,1年分の給与保障を約束させた.


京都新聞(5/26付)

大学の非常勤講師問題
新たな教育システムを
取材ノートから (社会報道部千葉紀和)

 国立大法人化を前にした連載「大学激変」の取材で,非常勤講師制度に矛盾を感じた.◆少子化で大学間競争が激化する中,法人化した国立大も含め大学は経営が問われている.少しでも人経費を抑制したいのが本音だろう.学生のために,最先端の学問を取り入れたり,多彩な講義を用意する必要もある.ただ,本来専任で賄うべき講義まで非常勤に丸投げしている現状は怠慢ではないか.頼るなら待遇の改善は当然だ.◆従来のシステムに問題があるのは間違いなく,「近く非常勤の存在を見直す時が来る」とみる私大幹部もいる.◆彼らの能力を活用しながら,各大学が掲げる理想の教育像との整合性をどう図るか.難しい課題だが,改革はこの点を忘れないでほしい.その前提として,まず各大学や文部省による詳細な実態調査が欠かせない.◆いま大学界は半世紀に一度の大改革の時と言われる.「大学自治」の理念に照らして,新たな教育システムづくりに大学自ら知恵を絞る時だ.