文科省から各国立大学へ「非常勤講師を法人化後も均衡待遇法令や国会答弁などに基づいて労働者としてまともに扱うように」という通知.この通知の後,いくつかの国立大学での非常勤講師への対応の一部が一転して改善された (千葉大の25%賃金カット提案の撤回はその一例.『控室』第50号参照).

本文
別紙1
別紙2

法人化後における非常勤講師の給与について(通知)

15文科人第326号
平成16年3月15日

各国立大学事務局長(事務部長)
各国立高等専門学校事務部長
各共同利用機関管理局長(管理部長)殿
大学評価・学位授与機構副機構長
国立学校財務センター管理部長

文部科学省大臣官房人事課長
板東 久美子(公印省略)

法人化後における非常勤講師の給与について(通知)

 非常勤講師については、法人化後「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム労働法」)の適用を受けることになりますので、法人化後における非常勤講師の給与については、労働基準法及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律等(別紙1)の規定に則り、また、非常勤講師の給与に関する現行の取り扱い及び最近の動向(別紙2)を十分に踏まえ、適切に対応願います。

担当 文部科学者大臣官房人事課給与班給与第三係
電話 03-5253-4111(内線)2139


別紙1
関 係 法 令

○短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)(抄)

(事業主等の責務)
第3条 事業主は、その雇用する短時間労働者について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して、適正な労働条件の確保および教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善(以下「雇用管理の改善等」という。)を図るために必要な措置を講ずることにより、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする。

(指針)
第8条 厚生労働大臣は、前2条に定めるもののほか、第3条第1項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等のための措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な措置(以下この節において「指針」という。)を定めるものとする。

○事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針(抄)
     平成5年12月1日労働省告示第118号
  改正:平成15年8月25日厚生労働省告示第297号【改正概要:別添】

第2 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置を講ずるに当たっての基本的考え方

 事業主は、短時間労働者について、労働基準法(昭和22年法律第49号)、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)、育児休業、介筆休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等の労働者保護法令を遵守するとともに、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇するべきである。中でも、その業務が通常の労働者と同じ短時間労働者について、通常の労働者との均衡を考慮するに当たっては、事業主は、次に掲げる考え方を踏まえるべきである。

1 人事異動の幅及び頻度、役割の変化、人材育成の在り方その他の労働者の人材活用の仕組み、運用等(2において「人材活用の仕組み、運用等」という。)について、通常の労働者と実質的に異ならない状態にある短時間労働者については、当該短時間労働者と通常の労働者との問の処遇の決定の方法を合わせる等の措置を講じた上で、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じて処遇することにより、通常の労働者との均衡の確保を図るように努めるものとすること。
2 人材活用の仕組み、運用等について、通常の労働者と異なる状態にある短時間労働者については、その程度を踏まえつつ、当該短時間労働者の意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡を図るように努めるものとすること。

第3 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置

 事業主は、第2の基本的考え方に立って、特に、次の点について適切な措置を講ずるべきである。

 1 短時間労働者の適正な労働条件の確保
 (8)賃金、賞与及び退職金
 事業主は、短時間労働者の賃金、賞与及び退職金については、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする


別添
パートタイム労働法に基づく指針の改正について

 パートタイム労働指針(事業主が講ずべき短時間労働者の層用管理の改善等のための措置に関する指針)が平成15年日8月25日に改正され、平成15年10月1日に適用されました。その概要は以下の通りです。

1 改正の背景

 労働政策審議会雇用均等分科会(雇用均等分科会)において、通常の労働者とパートタイム労働者の間の公正な処遇問題を中心に、今後のパートタイム労働対策の方向について、平成14年9月から検討が行われてきましたが、通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を具体的にパートタイム労働法に基づく指針(「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」)に示すことにより、その考え方の社会的な浸透・定着を図っていくことが必要である等との提言を内容とする報告が取りまとめられました(平成15年3月)。
 本改正は、この雇用均等分科会の提言を踏まえ、行ったものです。

2 改正の概要

(1)事業主が、パートタイム労働者の雇用管理の改善等のための措置を講ずる際の就業の実態、均衡等を考慮して処遇するとの基本的考え方を具体的に示しました。

@ 職務が通常の労働者と同じであり、人材活用の仕組みや運用等も通常の労働者と実質的に異ならないパートタイム労働者については、同一の処遇決定方式等により均衡の確保を図るように努めるものとすること
(同一の処遇決定方式:例えば同じ賃金表を適用する、賃金の支給、査定や考課の基準を合わせることである)
A 職務は通常の労働者と同じであるが、人材活用の仕組みや運用等が通常の労働者と異なるパートタイム労働者については、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置等を講ずることにより、均衡を図るように努めるものとすること

(2)事業主に対し、(1)の基本的考え方に立って、雇用管理の改善等のための措置を講ずることを求めることとしますが、新たに以下の措置を講ずるよう努めることを示しました。

@ 通常の労働者への転換に関する条件の整備
A 職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置の実施
B 労使の話合いの促進のための措置の実地
・パートタイム労働者の求めに応じた処遇についての説明
・パートタイム労働者の音見を聴く機会を設けるための適当な方法の工夫
・事業所内の苦情処理の仕組みの活用等苦情の自主的な解決

【厚生労働省ホームページより抜粋】


別紙2
非常勤講師の給与に関する最近の動向

1.国会関係

(1)第156回 参・文教科学委員会(平成15年6月5日)議事録抜粋
【国立大学法人法等関連6法案質疑】
○神本美恵子君(民主党・新緑風会)
 それで、非常勤職員、公務の場における非常勤職員の方はいわゆる民間法、これから民間労働法制が適用されることになるわけですけれども、パート労働、いわゆる短時間労働者に関して、今、パート労働法の見直しが厚労省の方で行われておりまして、労働政策審議会での議論を受けて二月に出された報告では、通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を指針で示すというふうな報告が出され、お聞きしましたところ、厚労省の方ではその指針を速やかに作るということで今作業が進められているというふうにお聞きしたんですが、これは非常勤職員だけではなくて、ごめんなさい、非常勤の職員だけではなくて非常勤の教員にも通用されることになると考えております。
 そこで、その指針が示されれば当然これに従うことになると思いますが、文部科学省として、この民間労働法制のこういう動きも含めて、その適用に関してしっかりと大学法人の方に説明していく責務があるというふうに思います。また、必要な予算措置も行う責務があると思います。七万人を超える非常勤の教職員にかかわる生活上の問題でありますし、この問題については先日、決算委員会で私もお聞きしていたんですが、河村副大臣がお答えになっておりますので、是非ともしっかりとした対応についての御答弁をお願いしたいと思います。

○副大臣(河村建夫君)
 …………非常勤講師の手当については、御案内のように、一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第二項にそのことがあっておりまして、常勤を要しない職員については、各庁の長は、常勤の職員の給与との権衡、バランス、これはバランスのことでありますが、考慮して、予算の範囲内で給与を支給すると、こういうことによって予算の範囲内で各大学が決定をしてきておるわけでございます。
 今度、国立大学の法人化をいたしますと、非常勤講師についてはいわゆるパート労働法といいますか、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律、この適用になっていくわけでございますから、同法によりますと、今度は「事業主は」と、こうなってきておりますが、通常の労働者との均衡等を考慮して適正な労働条件を確保すると、こうなっておるわけでございます。国立大学法人の非常勤講師の給与については、この趣旨にのっとって、この趣旨にのっとって各国立大学法人においてそれぞれの自主性、自律性の下に決定をすると、こういうことになっていくわけでございます。

(2)第156回 参・内閣委員会(平成15年6月12日)議事録抜粋
【一般質疑】
○川橋幸子君(民主党・新緑風会)
 ‥‥… 国公立の大学の場合は今独法化が進んでおりまして、文教委員会の方で審議中なわけですが、いずれ通るでしょう。それが実施されると、今度は民間の労働者となるわけでございますね。そうしますと、パートタイム労働者等の法律がそのまま適用される。ですから、格差、均衡処遇を確保するためのガイドラインが厚生労働省から出た場合には、それはそっくりその非常勤講師の方々も適用されて、専任の講師、まさか教授と比べろとは言いません、類似の労働者ですから、専任の講師の方と非常勤で幾つか大学掛け持ちなさる方との賃金、これは均衡を保たなければいけないというガイドラインに沿った指導は文科省として当然なさるということですね、ということ。
 プラスして、私学は今でも適用があるわけでございますが、具体的なガイドラインがなかったということでございますけれども、具体的なガイドラインができれば即、独法化というようなその機構改正を待たずに適用される問題でございますね。お願いいたします。

○副大臣(河村建夫君)
 …………現時点では、いわゆる時間給は、一般職の職員の給与に関する法律があるわけでございます。これに基づいて当該職員を常勤講師として採用した場合に受けることとなる月給ですね、いわゆる俸給ですが、この予算の範囲内で非常勤講師の給与も決めていると。この単価、単価は時間給という形でありますけれども。ただ、この場合に、講義時間以外にも講義のための準備や学生に対する研究指導等も行うということもございますものですから、単純に常勤講師を時間で割ってというような形ではなくて、高めにといいますか、大体三倍弱でありますが、経験年数という、いろいろ計算式はあるようでございますけれども、そのものを差し上げているという状況でございます。
 そこで、御指摘のいわゆる法人化後でございますが、いわゆるパート労働法の適用を受けるわけでございまして、通常の労働者との均衡等を考慮して適正な労働条件を確保するようにと、こうなっておるわけでございますので、法人化後において非常勤講師の給与はこの趣旨にのっとっていくということでございまして、これは、各国立大学法人においてそれぞれ自主的に、自律的に決めていただくと、こういうことになっておりますし、これは、国立大学法人に今度なりますと、運営交付金が算定して渡されるわけでございます。この枠の中でやるわけでございますが、法人化になった途端にどんと下がるというようなことはあり得ないことであります。そんなことがあってはならぬわけでございまして、当然、今までの支給実績というものがまずありますから、それを踏まえて対応していかなきゃならぬと、こういうことになるわけでございます。その点は十分、今回、新しく今検討されておりますが、その趣旨を受けて対応するようにということでございます

2.首都圏大学非常勤講師組合等陳情(平成16年2月23日)
  金田誠一(衆・民主)、川橋幸子(衆・民主)、井上美代(参・共産) 同席

○要求(要望)
@ A国立大学において、2004年度から非常勤講師の給与を一律25%値下げするとしているが、この妥当性について
A 法人化後の常勤講師の給与の減額がないにもかかわらず、非常勤講師のみにこのような急激な値下げを行うことの正当性について

○回答
 国立大学法人化後においては、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に従い、非常勤講師の給与額を決定する必要がある。

(以上=2004年3月下旬に文書情報を得てほぼ同じに復元)